RoseMarina城に伝わる古い本。
マリー姫はお母さまから譲り受けた古い本を大切にしていました。
まだ一度も表紙を開いたことはありません。
姫はお母さまに言われたことをちゃんと覚えておりました。
『マリーの12歳のお誕生日までこの本を開いてはいけないよ。
魔法使いがやってきて、おまえをおばあさんにしてしまうからね。』
姫が12歳のお誕生日を迎えて、お城では盛大な舞踏会が開かれました。
たくさんの招待客からの贈り物、豪華なご馳走、
姫はその日とても嬉しかったのですが、いつもと違う忙しさに
身も心も大変疲れ果ててしまいました。
お部屋に戻り、楽しみにしていた古い本を手に取りました。
『わぁ、今日はこの本を開いても良い日なのね。』
姫はさっそく表紙をめくり、長い長いおとぎ話の世界へと夢中になりました。
古い本には魔法がかけられているようです。
姫はページをめくるとどんどん眠りについてゆきました。
大好きな薔薇の香りが姫のお部屋を満たして、
姫はそれはそれは幸せな気持ちになりました。
古い本にかけられた魔法が用意してくれた
あたたかい赤いお花のお茶を飲みながら、
姫は再びうっとりとした気持ちでお話を読みはじめました。
『うふふ。わたし、舞踏会の疲れなんてどこかに行ってしまったわ。
これからたくさんお話を読んでいけるわ。
おてんばな子ウサギちゃん。次はどんなお話かしら。』
RoseMarina城では代々、
姫と王子の12歳のお誕生日は盛大に開かれており、
姫と王子たちは皆へとへとになってしまうものでした。
そのことを心配した心優しい薔薇の魔法使いの妖精は、
姫と王子の大好きな楽しいおとぎ話の本に、
ほっとひと息つくことのできる魔法をかけておいたのです。
魔法使いの妖精は大人になると見えなくなってしまいますが、
姫には魔法使いの妖精がはっきりと見えるようです。
『薔薇の妖精さん、わたしはもうだいじょうぶよ。
優しくしてくれてありがとう。この本は大切にするね。』
そして明くる日も明くる日も姫は元気にお庭を駆けまわり、
お友達といっしょにお庭で薔薇のブローチを作って楽しく過ごしました。
すべての姫と王子へ。
RoseMarinaより愛をこめて。